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            メール・マガジン

       「FNサービス 問題解決おたすけマン」

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    ★第023号         ’99−11−26★

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     事例研究:「日産自動車」(2)

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●四輪車大嫌い

 

の上、投資や利殖に縁のない私だから、日産自動車の業績など知りたいと思った

ことはありません。 けれども報道されるから、どうしても目に入ってしまう。

 

 

何と’80年代初めから20年間、シェア低下の一途。 ’94年上期に一度、

僅か上向いたことがあっただけ。 業界常識として、これは<あるべき姿>では

ないはず。 その<現実>が20年も?!  何か間違っていたことは明白です。

 

もともと私自身はシェア競争なんてムナシイことに興味がありませんから、実は

どちらで構わないのですが、たしかあの会社は構っていたはずですから、これは

やはり<問題>とせざるを得ないのではないか、と思うわけです。 

 

じゃ、シェアはともかく、(企業目的の大切な1項目である)<利益>の点では

どうだったか? で、またビックリさせてくれるんですな日産自動車さんは。

 

91年以降、8期中7期赤字(、、とTVでは言っていたが、ホントかね?、、)

とはミットモナイ。 が、話を聞けば、それも当然。 人気の無い車、だから売れ

ない、それを値引きで押し込む、評価が下がってさらに売りにくくなる、、そんな

破滅的循環、これを<ビジネス>と言うべきか、どうか? 

 

20年間に何人の役員さんが発生したか知らないが、まあ、ドロボーでしたな。

 

*   *

 

「日産の一人負け」とまで言われる状況の責任を、せめて給料、賞与、退職金の

返上という形で取っておられたのならともかく、敢えて邪推するが、やはり懐に

収められたのでしょう?  挙げ句、「ゴーンさんに全部お任せしちゃいました。」

 

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●<あるべき姿>を初めから

 

「長期低迷・毎期赤字」と設定したわけではあるまい。 しかし、それが<現実>。

両者の大きな<かけ離れ>が大<問題>。 それが長らく解決されずに存在して

いる。 このような種類の問題を、(EM法では)「慢性問題」と申します。 

 

こまごました問題を個別・的確・徹底的に処理しないでいると、やがてカタマリ

になって、解きほぐしようがなくなる。 最後は大手術で、、と。 成人病的!

 

 

ケプナーとトレゴーの Rational Process は原因究明の手順を提供しておりますが、

慢性化した問題は、その標準的手順では解けないことが多いのです。 

 

「こりゃ大問題!」と来れば、「じゃ、原因を究明しよう」と思い立つ。 これは

自然かつ健全な心の働きです。 しかし慢性問題の場合、原因についてはたいてい、

皆さん先刻承知でいらっしゃる。 現にTVでは、「社員は何故かを知っていた」が

「出来なかった」とされていました。 

 

つまり技法とは無関係に、「原因は分かっていた」のだから、今更「究明」する

までもないのです。 それより、どう解釈するか?  思い付くのは、たとえば、

 

イ)「分かって」いる人の声を吸い上げる仕組みが無いらしい。

ロ)「出来なかった」にも理由はあるはず。 それは何か?

ハ)「社員」は「知っていた」というが、トップはどうなのか?  など。

 

不具合はほかにも色々あるでしょうし、関心にも個人差はあるでしょうが、、、

それらを慢性的に放置していたのが良くないのですから、ともかく対応を急ぐ、

とした方が建設的で、気分も盛り上げやすいのではあるまいか。

 

*   *

 

イ)は、提案制度の機能不全かも。 しかし、組織や人にからむ話は、在来の

その種の制度では、出すことも処理することも難しいかも知れない。 そこで、

 

マネジメント的提案を取り上げ、また処理する別の仕組みの新設が必要だろう

と思われます。 いずれにしても、どう対処するのが良いか、の考えですから、

「決定分析」の課題として扱うことにした方が促進しやすいでしょう。

 

ロ)の「理由」もほぼ分かっているでしょうから、原因の究明は無用。 むしろ

色々なことがからまっているものなので、まず、あらゆる立場の人々から、具体

的事象を抽出する必要があります。 それを引き受けるのは「状況分析」。

 

抽出された多くの事象を吟味して優先すべき項目を特定し、それら各個に改めて、

分析なり実施なり、手を下すことにするのが良いでしょう。

 

ハ)は、、ちょっとアブナイ。 自分のことを変えるのも難しいのに、ひと様を

どうこう出来るものでしょうか。 手を付けたところで効果は期待できず、そこ

から生じうる危険は明白。 留め立てはしませんが、私は君子、危うきには、、、

 

トップが知らないとは思いたくないが、本当に「知らない」なら、能力が疑問。

もし知っていて「しない」、「出来ない」としたら、人柄に疑問あり。 そんなの

が役員を務めている会社に居続けたらどうなるか、は(KT法)「潜在的問題

分析」、(EM法)「リスク分析」の課題。 <身の上対策>を講じましょう。

 

*   *   *

 

どこかには「原因の究明」を要する部分も見いだせるでしょうが、まず細分化し、

きめ細かく工夫しないと解きほぐせないのが慢性問題です。 このように、技法

のどの部分をどう活用するか、については多少の経験や機転が要るのです。

 

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●<慢性問題の解決者>として

 

工場を訪れたゴーン氏の姿には、大いに学ぶべきところがありました。 質問の

鋭さも、答えを促す迫力も。 「問題解決者は質問者!」を演じてくれました。

 

「どうですか、ここでは?」なんて漠然たる問い方は一切しない。きわめて具体

的に突っ込む。  コスト管理はどこで?  鉄のスクラップ率は? など。

 

  実のところ私は自動車産業には無縁で、「コスト管理」が「どこ?」と言われ

  るような「形」で、ライン脇で行なわれるものか知りませんが、ルノーには

  何かあるんでしょうな。 また、色々な指標がある中で、「スクラップ率」が

  飛び出すとは案内係さんも予測しなかったろう。 日常的管理項目ではない

  でしょうから。 ルノーではそうなんですか? とでも訊けば良かったのに。

 

  答えるのに懸命、の気持ちは分かるが、相手に質問の趣旨を確かめることも

  大切。 さもないと見当違いの答えをして、さらにバカだ思われかねません。

 

答えが滞っていると、「説明して下さい」、「時間を割いて来ているんだ」とムチが

入る。 ゴーン氏の<自分もコスト>意識がそう言わせたのでしょう。 1秒も

無駄にしないぞ! と。 その時の彼のオーラ、きっとスゴイ色だったに違いない。

 

 

<質問>については、いずれ別の号で改めて書きますが、問題解決・意思決定の

技法と言われている Rational Process は、実際には「質問の技法」なのです。即ち、

 

管理職が自分の判断材料としての情報を集める、最も直接的な手段は<質問>。

それは的を射た質問でなくてはならず、そういう質問を発するには論理的な思考

パターンが身に着いていることが必要。 Rational Process は、まさにそのパターン。

 

*   *

 

研修では技法解説の後、受講者に実務で抱えている問題を申し出て頂き、それを

材料に、実技演習をグループ討議形式で行ないます。 講師は討議の促進を助け

ますが、それは主に、彼らが「忘れている質問」を彼らに代わって発することに

よって行なうのです。  つまり、ゴーン氏のように、、、。 そうすると、

 

誰かはハッと気づく。 いつもより速く、あるいは深く突っ込んだ結論が出る、、。

中にはギクリとされる方もあり、あとで事務局を「講師に情報を与えすぎている

のではないか」と<詰問>なさった受講者もいた、、、など聞きました。

 

もちろん講師は全く白紙で臨んでおり、ギクリとさせた(と言われた)質問も、私の

必要ではなく、技法の必要で発したに過ぎなかったのです。 ご本人は十分に考えて

いたつもりでも、時に欠落を生じていることはあります。 技法がそこを衝いただけ。

 

*   *   *

 

ゴーン氏がどんな方法論をお持ちなのか、コスト管理の場所や鉄のスクラップ率

が彼の図式のどこに収まるのか、それは私の想像にあまることです。 が、彼と

共に働く立場の人においては、それが分かっていないと調子が合わないでしょう。

 

Rational Process は、「その立場の有能な人々の思考パターン」を技法化したもの

なので、おおまかな骨組みとして、すぐ役立つと思います。 アチラ風上司の下で

働く皆さんには、文化ギャップ解消ツールとしてもお奨めする次第です。

 

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●「コスト・キラー」が

 

訪問してくるからには、コスト関連の質問が連発されるはず。 そう考えるのが

普通だろうし、それなりに準備しただろう。 だが、テキはさるもの。 予定の

順路を外れて歩き回った。 これ、「潜在的問題分析」で対処できたかな?

 

何と言ってもCOOの行動だから、留め立ては出来ない。 まず予防対策は無い。

とすれば、緊急時用対策。 「あらかじめ〜しておく」というものでしたね。

 

たとえば「考えたことも無いようなことをいきなり訊かれる」と想定し、「彼を

失望させず、案内者の面目も失われずに済むような対応」の例文をいくつか作り、

暗唱しておくべきだったかも。 英語のやり取り、実に心許なく聞こえました。

 

 

埠頭設備も見たい、と彼が言い出した時の案内者、「時間がありません、、」。

案内者は(帰りの飛行機の?)「時間」を先に考えたが、結局ゴーン氏は強行。

たちまち「(埠頭の保有・使用は)出荷コスト削減になるのか?」、あくまでも

「コスト」関連情報の収集。 工場訪問の趣旨からして、これは案内者の負け。

 

あらかじめ想定し、1便遅れても帰れるように手配しておく、くらいしておけば、

「時間が、、」という姑息な、訪問の趣旨からすればナンセンスな答えはせずに

済んだはず。 普通の、形式的な、「甘い」訪問者と同列に扱ったのが間違い。

 

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●ルノー会長 シュバイツアー氏

 

は、ゴーン氏を起用した理由を、「彼はいくつもの業務で成功している。ある業務

で成功する人物は、次の新しい環境でも成功するものなんです。」と説明している。

 

その通り。 人間は大別して成功型と失敗型、と申します。 出来る人と出来ない

人、に分けることもある。 運も多少からむでしょうが、それも実力のうち、とか。

しかし、あの熱意でまともに取り組めば、、、そりゃ成功もするでしょうよ。

 

 

これまでの役員37人を一挙10人に、とも報道されたがムベなるかな。 何が役員

の資格とされるのか知らないが、日産では「成功」ではなかったはず。 同社長年の

業績から見ますと、ね。  現にそのルポの中でも、「責任があいまい」で、

 

「覚えのめでたい人が昇進」する体質と解説されました。 大切なのは「覚え」で

「働き」じゃないんだ、となれば50人いたってゼロも同然。 もちろん「昇進」

は個人的には「成功」でしょうが、その人のサービスは「塀の中」。 社会公共へ

の奉仕という企業本来の存在目的からは「かけ離れ」ております。 「問題」だぜ。

 

役員選定のための MUST 、 WANT を作り替えるのも、ゴーン氏の仕事かな?

 

*   *

 

ルノー流「集中購買」化について、「日産でも声はあったが、縦割りマネジメント

が裏目」で実現できなかった、と担当者。 そうかなあ? 縦だろうと横だろうと、

具合の良くないのを何とかするのが<マネジメント>だと思っていましたが、、、。

 

部品仕様の不合理さ加減については納入業者も認めており、「何度も具申している

が、届かない」とも。 まあ、社内の声すら聞かない体質ですから、外の、まして

(彼らとしてはソンケイしているわけでは多分ない)「業者」さんの声では、ね。

これは態度や人柄の問題。 死ななきゃ直らない。  死んでもらいましょう、、。

 

*   *   *

 

テクニカルセンター、デザイン本部を訪れたゴーン氏、新セドリックのデザイナー

に質問。 「この車で、どういう成果を期待していますか?」

 

答え、「<ゆったりとくつろげる良いインテリア>という評価が頂けることを、、」。

 

再質問、「3カ月後の販売目標台数は?」。 答え「月当たり3500台」。 と、

ゴーン氏、「では、3500台売れれば成功、それ以下なら失敗ですね?」。

 

ゴーン氏が MUST を尋ねたのに対し、 WANT の答え。 そこで再質問となった、

と言えますね。 相手の質問に、 MUST か WANT か確かめて答える、そんな配慮が

必要かも知れません。 また、設計における「目標」の設定をそこまで明確にするの

がアチラ風らしい、ということにも気づくべきでしょうね。  ところが、

 

*   *   *   *

 

日産自動車では、それが「明確でなかった」どころか、「全く無かった」らしい。

「何を作ればいいか、分からないままに作って来た。 企画とデザインのズレなど、

沢山あった」とデザイン本部の主担さんが語っているのだから。 これじゃ潮流を

生み出すわけがない、むしろ漂流、、 ですな。 

 

果然、当然、「日産として、デザインとして何も見えない」、「パッとしない」という

きわめて<妥当な>評価が生じ、値引きして買ってもらうほか無い。 因果応報。

 

*   *   *   *   *   

 

デザイン本部さんがOKを頂いた先は<塀の中>の面々。 それだけでもダメだが、

自動車経営開発研究所吉田所長の証言、「日産の重役には、クルマ好きがいない。

これじゃ、客の好む商品は出てこない」。  もう、究極のダメ、としか。

 

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●ゴーン氏は大丈夫、クルマ大好き。

 

休日も出て、栃木工場テストコースで自らハンドルを握り、200キロで飛ばす。

 

その後の屋外ミーティングでは例によって質問の連発。 しかし、答えが鈍い。

すると彼、「車の性能の正確な情報が欲しい」のだと押し、そこに「accurate 」を

3連発、付け加えましたぜ。 最後は特に、「 should be accurate! 」とね。

 

 

こと人間ならアバウトも仕方なかろうが、これはマシンなんだから、とばかり。

そして、「一般の人が理解できることが大切なんだ」、「低燃費のほかに客が実感

できる改良点は?」と突っ込む。 「加速がスムーズです」、それは WANT の

1項目、珍しくなんかないよ。 「それ以外のウリは?」  一同、絶句閉口。

 

とゴーン氏、「売らなきゃいけないんだから、教えてよ。頑張って答えてよ!」

こっちは本気なんだ、君らも義務を果たしてくれ! の迫り方。 日産自動車の

諸君、これまで見たこと無かったろうけど、これが本来的トップの姿勢なんだよ。

 

*   *

 

ちなみにこのたびお目見えのH社のハイブリッド、着手する時「世界一低燃費」

を指示された由。 これは過酷な MUST でしたが、達成しましたぞ。 ウリ!

 

「技術の〜」という肩書きが空しいのは日産自動車に限りませんが、商品戦略室

の主管さんが「技術と言っているだけで、客にとっての技術には至らなかった」

と告白。 おお、それも<塀の中>! 「象牙の塔だった。、、、反省している」

と。  商売ってものは、もともと<塀の外>でやる勝負なんですがねえ。

 

*   *   *   

 

貧すれば鈍す。 部品発注先の協力会社に、納入済みの品に対して、値下げを

要求したとも。 しかもそれが、かなり大幅だった由。 商売は続けたかろう、人質

を取られての話だから逃れようもなかろう。  卑劣、悪質、反社会的。

 

通念的商習慣に背くことを敢えてするなら、せめて「マイナス」だけでも見ておく

べきでした。 見たよ、その上でやったのさ、、なら、確信犯。 そんな会社と

取り引きせざるを得ない業者さんたちには、ぜひ「潜在的問題分析」を十分に、

とお奨めいたします。 <そんな会社>で働き続ける決心の皆さんも、ね。

 

しかしながら、以上は報道からの拾い集め。 当たらないところがあるとしたら、

それは報道のせい。 重ねてお断わりすると共に、あらかじめお詫びしておきます。

                               ■竹島元一■

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